JR常磐線我孫子駅のホームにある立ち食いそば屋「弥生軒」は巨大な唐揚で有名な店で、それに加えて画家の山下清が働いたこともある店としても知られています。通常の4倍サイズの唐揚が2個トッピングされたそばは唐揚がどんぶりに蓋をしたようになっていました。
特大サイズの唐揚で有名な店
駅の立ち食いそばというのは何とも魅力的なものがあります。茹でてから時間が経過したそばは柔らかくてコシなどなく、天ぷらも油がまわってしなしなとなっており、さらにつゆは真っ黒ということでとても美味くはないはずなのですが、これらが組み合わさると何とも言えない郷愁にかられるような味になるものです。特にホームに漂う匂いには魔力があり、空腹のときなど誘惑に負けてついつい入ってしまったことがこれまで何回もあります。
そんな駅そばの中で我孫子駅の弥生軒はマニアの間では唐揚そばで有名な店で、どんぶりからはみ出してしまうような特大サイズの唐揚げが2個トッピングされた写真はこれまで何回も見てきました。
もともとは弁当屋だった
弥生軒は昭和3年に創業した歴史のある店で、当初は駅弁を販売していたといいます。東京への通勤・通学客が増加するのに合わせて昭和42年から立ち食いそばの販売を開始しますが、次第にそれが主力商品となって昭和58年に駅弁の販売からは撤退しました。
現在は我孫子駅構内に3店舗、天王台駅に1店舗を構えています。ホームによって混雑時間が異なるため、営業時間も店ごとに違うようです。
名物の唐揚は通常の4倍近い大きさになっていますが、当初は少し大きめという程度だったといいます。しかし口コミで「唐揚げが大きい」という話が広まり、それに合わせて唐揚げも徐々に大きくした結果、もはや小さくできなくなったのだそうです。
山下清が働いていた店
弥生軒は「裸の大将」として知られる画家の山下清が昭和17年から5年間住み込みで働いていた店としても知られています。食糧難の時代に弁当屋で働けば食いっぱぐれもないだろうというのが狙いだったようで、手先が器用だった清は弁当のレッテルを貼ったり紐でしばったりなどの細かい作業をしていました。
放浪癖のあった清は突然ふらりと店からいなくなり、きっちり半年後に帰ってくるということを繰り返していました。昭和22年に最後の放浪に出た後はついに帰ってこず、しばらくしてから画伯として有名になったことを知ったそうです。
人気の立ち食いそば屋
唐揚がどんぶりを埋め尽くしていた
私は常磐線下りホームの店に入りましたが、狭い店内は客で埋まっていました。
「弥生軒名物」は唐揚が1個のそばのようですが、ネット上で取り上げられている記事は全て唐揚が2個トッピングされており、私も唐揚2個を注文することにします。
特大サイズの唐揚2個でどんぶりに蓋をしたようになっており、そばがほとんど見えません。とにかく唐揚を1個完食しなければそばまでたどり着きませんが、そうしている間に唐揚の脂がそばつゆに染み込み、唐揚がつゆを吸って味わいが時間とともに変わります。
基本的には東神奈川駅の日栄軒を思わせる極めてオーソドックスな駅そばですが、巨大唐揚が加わることにより実に印象深いものになりました。JR戦で幅を利かせている「あじさい茶屋」や「濱そば」ではとても出せない独立系ならではのメニューで、駅そばファンの方は是非一度訪れてみることをお勧めします。
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